鼎(かなえ) 純米吟醸 番外 おりがらみ (長野県)

日本酒

醸造元:信州銘醸株式会社

 信州銘醸株式会社は、1835年頃(江戸後期)に丸子町(現・上田市)で「桝屋」として創業し、戦中戦後の米不足や三倍醸造酒が推進された時代においてもいち早く脱却し、「旨い酒造り」の技術を磨いてきた。その歩みを経て昭和33年4月に法人・信州銘醸株式会社として設立され、現在は長野県佐久市に蔵を構える。展開ブランドは秀峰喜久盛、喜久盛、瀧澤、梁山泊、黒耀、鼎など30以上に及び、信州の風土を多彩な表現で映し出している。浅間山麓の冷涼な気候と千曲川水系の清冽な伏流水に恵まれたこの地は、古くから良質な米作りと発酵文化が根付く“信州酒の源流”とも呼べる土地である。
蔵の特徴は、伝統的な手造りを守りながらも、現代的な醸造管理を柔軟に取り入れる姿勢にあることだ。特に、酒造りに難しいとされる日本一の超軟水「和田峠の黒耀水」を仕込み水として使用する点は、信州銘醸の大きな個性である。ミネラル分が極端に少ないこの水は雑味のない透明感を生む一方、発酵管理が非常に繊細で、蔵の技術力が如実に問われる。
今回手に取った「鼎 純米吟醸 番外 おりがらみ」は、そんな蔵の哲学と技術を最も瑞々しい形で体現した一本である。銘柄「鼎(かなえ)」の名は、三本の脚を持つ古代中国の金属製器「鼎(かなえ)」に由来する。三つの脚が支え合って器を成すように、“世代の変わる三人(いずれも東京農業大学卒)を中心に蔵元が力を合わせ、酒の頂点を目指す”という想いが込められている。通常の鼎よりも遊び心を感じさせる“番外”の名を冠し、搾りたての新酒に残る微細な滓をあえて残すことで、発酵の余韻と米の若々しい旨味を同居させている。
その味わいは、マンゴーのような濃厚な果実香と芳醇な甘みの中に心地よい酸味が寄り添い、しっかりとした米の旨味を確認しつつ、強めの苦みが後味をキリリと引き締める。現代的な風味ながら味の輪郭がはっきりとした満足感の高い一品だ。ただし、滓由来なのか、わずかに金属的なクセを感じた。機会があれば、番外でない「鼎」も飲んで確かめてみたいと思う。
リピート度84%

【独自判定】
香り:5
甘味:5
酸味:4
苦味:5
コク:3
乳酸:3

購入先:和田音吉商店
価格:¥1,591

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