醸造元:八千代酒造合名会社


山口県萩市に蔵を構える八千代酒造合名会社は、1887(明治20)年創業の酒蔵である。創業者・蒲貫一が、この地を流れる阿武川の支流、蔵目喜川のほとりに蔵を構え、蒲酒造場を興したのがその始まりだ。朝晩の冷え込みが厳しいこの土地は酒造りに適した環境であり、清冽な水とともに酒質を支えてきた。
銘柄「八千代」は、「君が代」の一節「千代に八千代に…」に由来し、この酒を口にする人々の繁栄と長久を願って名付けられたもの。昭和28年の会社設立に際して社名も八千代酒造と改められ、その想いは現在に至るまで受け継がれている。
近年は、次代を担う女性杜氏の存在にも注目が集まる。萩市(旧むつみ村)に生まれた三姉妹の長女は、高校卒業後に一度上京するも、家業と日本酒文化を守る使命感から5代目を継ぐ決意を固め、2017年にUターン。「伝統に革新を加え、新たな価値を生み出す」という理念のもと、2019年より同じ萩市の澄川酒造場で研鑽を積み、自らの手で新ブランドを立ち上げた。
それが今回のROOM La+YACHIYOである。「La+ YACHIYO」という名には、天文学者ピエール=シモン・ラプラスの提唱した惑星の共鳴現象への着想と、価値を加える「+」、そして「place(場所)」といった意味が込められている。多様化する時代の中で、“個”のライフスタイルや感性に寄り添う酒を目指した、従来の枠にとらわれないコンセプトが特徴だ。
その味わいは、口に含むと白ブドウやビワを思わせる穏やかな吟醸香がふわりと広がり、花蜜のように素直で嫌味のない自然な甘味に、透明感のある酸味が調和する。やがて山田錦由来のほのかな旨味が感じられ、清涼感のある苦味が爽やかな余韻を残しながら静かに消えていく。自然と次の一杯を誘う、満足度の高い純米吟醸酒である。
ラベルの裏書にある通り、週末に心を解きほぐしながらゆったりと味わいたい一本。新たな美酒との出会いに思いを馳せながら、杯を重ねた。
リピート度87%
【独自判定】
香り:4
甘味:5
酸味:4
渋味:3
コク:3
乳酸:2
購入先:いまでや 銀座店
価格:¥1,782



コメント