醸造元:板倉酒造有限会社


島根県出雲市の山あいに蔵を構える板倉酒造有限会社は、1871年(明治4年)に創業した歴史ある酒蔵である。蔵の歩みは、出雲の清らかな水と肥沃な土地に寄り添いながら、米と麹、そして発酵の営みを丁寧に見つめる酒造りを志したことに始まる。出雲地方は古くから神事と発酵文化が深く結びつき、“酒の国”として知られてきた地域だ。板倉酒造はその風土の中で、派手さを求めず、自然な発酵が生み出す穏やかな味わいを大切にしてきた。
“天のごとく穏やかであること”を意味する名の通り、天穏の酒は華美な香りや強いインパクトを追わず、米と麹、そして発酵が生み出す自然な調和を静かに表現する。特に生酛造りを中心に据え、乳酸菌や酵母の働きを最大限に引き出すことで、深みと透明感を併せ持つ独自の酒質を築いてきた。板倉酒造の酒造りの特徴は、“発酵を整えることで酒は自然に美しくなる”という哲学にある。
最新設備に頼りすぎず、麹づくりや発酵管理には丁寧な手仕事を重ね、雑味を抑えながらも米の旨みをしっかりと引き出す。結果として生まれるのは、飲み飽きせず、食卓にそっと寄り添う“余白のある酒”。代表銘柄「天穏」は、静けさと奥行きを併せ持つ味わいで多くの愛飲家を魅了している。
今回は、その中から島根県産改良雄町を60%まで磨いた「天雲 生酛純米吟醸」を購入してみた。
その味わいは、ツツジやサクランボを思わせる控えめな香りに、繊細でほのかな甘みと穏やかな酸味が静かなバランスを保ち、米の旨味がじんわりと口内に広がる。続いて、優雅で控えめな苦みが透明感のある余韻を残しながら、平穏な水面へ吸い込まれるように静かに消えていく。“天雲”という名のイメージがそのまま味わいに宿っている。
出汁で炊いた大根、湯葉や湯豆腐、山菜の天ぷらなど、素材の味を生かした料理との相性が良いと感じられる。
リピート度75%
【独自判定】
香り:2
甘味:3
酸味:3
渋味:3
コク:4
乳酸:1
購入先:吉祥 西武東戸塚店
価格:¥1,700


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