醸造元:有限会社丸尾本店


丸尾本店は明治18年(1885年)創業、香川県仲多度郡琴平町に蔵を構える老舗酒蔵である。蔵の起源は、幕末の志士・高杉晋作や桂小五郎をかくまったと伝わる歴史的建物を丸尾家が受け継いだことに始まる。金刀比羅宮の麓に広がるこの土地は、古くから旅人と文化が行き交い、豊かな水と米に恵まれた“酒造りの里”として知られてきた。
丸尾本店の酒造りの特徴は、和釜と木製甑を用いた古式の徹底にある。掛米の処理から麹づくりに至るまで、純米大吟醸から純米酒まで同じ労力を注ぎ、さらに全量無濾過、生原酒比率7割以上、炭素濾過なしという“できたままの酒”へのこだわりを貫く。タンクごとに味わいが異なることをむしろ魅力とし、米の個性をそのまま酒に映し出す姿勢は、大量生産型の酒蔵とは対極に位置する。
代表銘柄「悦凱陣」は、日清・日露戦争の戦勝を機に付けられた名称である。濃醇な旨味と高い酸、そして熟成によって深みを増す酒質で知られ、全国に熱烈なファンを持つ“唯一無二の個性派”として高く評価されている。
今回は、広島県産八反錦を使用した新酒「悦凱陣 純米吟醸 興(こう) うすにごり生」を購入した。この酒は、杜氏・丸尾忠興氏の名から一文字を取った「興」を冠し、毎年“新酒第一弾”としてリリースされる特別な一本である。八反錦を50%まで磨き、熊本9号酵母で仕込んだ純米吟醸で、うすにごり表記ながら実際にはほぼ澄んだ状態で出荷される年が多い。
その味わいは、スダチを思わせる吟醸香に仄かな甘さが寄り添い、強めの酸味と控えめながら存在感のあるコク、さらに+16〜17度を想起させるシャープな苦みが相まって、切れの良い後味をもたらす。キレの良い辛口のため、すき焼きなどの鍋料理や焼き肉といった味の濃い料理との相性が良さそうである。
リピート度83%
【独自判定】
香り:3
甘味:3
酸味:5
苦味:5
コク:3
乳酸:4
購入先:和田音吉商店
価格:¥2,534



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