醸造元:花の香酒造株式会社


熊本県玉名郡和水町に蔵を構える花の香酒造株式会社は、1902(明治35)年創業の酒蔵である。創業者の神田角次・茂作親子が、地元の妙見神社の神田を譲り受け、神社の湧水と自ら育てた米を用いて酒造りを始めたことがその起源とされる。
しかし時代の流れの中で蔵は一時経営危機に陥った。そこへ六代目の神田清隆氏が蔵に戻り、酒質の抜本的な見直しを行うことで酒蔵を再生。完成度の高い酒造りによって、同蔵は全国から注目を集める存在となった。
さらに同蔵の取り組みは酒造りそのものだけではなく、地域の環境そのものを本来の形に還す取り組みをしており、その並々ならぬこだわりには思わず敬服させられる。こうした哲学を体現するブランドが【産土】である。環境づくりから始まる「十二階位の農醸」という独自の概念のもとで醸され、日本酒愛好家の間では入手困難な銘柄としても知られるようになった。
今回購入したのは産土 2025 香子 五農醸。この「五農醸」は、以下の条件で醸された段階にあたる。
- 無肥料栽培
- 無農薬栽培
- 生酛仕込み
- 木桶醸造
- 地元・菊池川流域産の香子を使用
使用米の肥後香子(かばしこ)は、享保年間に九州一円へ広がった古代米「香子」を源流とする在来種である。その歴史は天保年間に誕生した酒米「穂増」よりもさらに古い世代にあたり、かつては高級米として名を馳せていたという。現代ではほぼ失われていたが、わずか40粒の種籾から3年の歳月をかけて復活した希少な米でもある。この米は、その名の通り米そのものの香りが高いことが特徴で、蒸し上げると隣近所にまで高貴な香りが漂うほどだという。
その味わいは、口に含むと微発泡を帯びた力強い酸味が鮮烈に立ち上がり、同時にパインやマンゴーを思わせる南国系果実のような吟醸香が瞬間的に口内へ広がる。続いて、熟したバナナのような密度のある甘さが舌に染み渡り、シルキーな乳酸香とともに、香子が“食べても美味しい米”であることを実感させるコクが現れる。そこへ調律の取れた苦味が重なり、長い余韻を残しながら静かに消えていく。
低アルコール由来の、体に負担を感じさせない自然な酔い心地も心地よい。できることなら毎日でも飲みたい、定番酒にしたいと思わせる一本。体が欲する美味しさが、ここにある。
リピート度92%
【独自判定】
香り:4
甘味:5
酸味:5
渋味:5
コク:4
乳酸:4
購入先:和田音吉商店
価格:¥4,880


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