醸造元:府中誉株式会社


茨城県石岡市に蔵を構える府中誉株式会社は、1854(安政元)年創業の老舗酒蔵である。霊峰筑波山の東麓に位置し、豊かな自然と歴史に育まれながら、長きにわたり酒造りを続けてきた。
同蔵の代表銘柄には、渡舟、太平海、そして蔵名を冠した府中誉があり、いずれも高い評価を得ている。なかでも「渡舟」は、幻の酒米「渡船」を復活させた酒として知られる。研究機関に保存されていたわずか14グラムの種籾をもとに、地元農家との協力によって栽培を復活させたことは、日本酒史の中でも象徴的な出来事といえる。
今回購入したのは渡舟 純米吟醸 五十五。使用米は、酒米「渡船」の系譜に連なる「渡舟(短稈)」である。筑波山東麓の八郷盆地・太田ノ谷で栽培されたこの米を100%使用して醸されている。この地域は三方を山に囲まれた南向きの斜面にあり、秋には寒暖層の逆転現象によって暖気が谷奥へ流れ込み、稲がゆっくりと成熟する環境が生まれる。こうして育った米は柔らかく溶けやすく、麹の破精込みや低温発酵に適した酒米となる。
その味わいは、ラムネもしくは青リンゴを思わせる瑞々しい吟醸香に、まろやかな甘みと程よい酸味が見事に調和する。柔らかな米の旨味が口内に拡がりながら、抑えめな苦みが膨らみのある余韻を残しながら静かに消えていく。府中誉の渡舟は、何度も飲んでいるが、いつ飲んでも期待を裏切らない、洗練された味わいにあらためて感動した。
リピート度87%
【独自判定】
香り:4
甘味:4
酸味:4
渋味:4
コク:3
乳酸:3
購入先:吉祥 西武東戸塚店
価格:¥1,590


コメント